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 シカゴの輝いている人 VOL.6
 柳橋 隆 さん (MR. TAKASHI YAGIHASHI)
 TRIBUTE (トリビュート) エグゼクティブ・シェフ
 
シカゴで活躍されている方々にインタビューをし、その人の活躍の場、内容、素顔を通してよりシカゴを知っていこうと企画された“Brilliant People” 輝いている人!
今回からはおでかけ.USの範囲拡大に伴い活躍の場もシカゴからアメリカ中西部に広げてアメリカで活躍している方々をご紹介していきたいと思います。 
第6回目に登場いただくのはトリビュートのエグゼクティブ・シェフである柳橋 隆さんです。
柳橋さんは米レストラン界のオスカーとも呼ばれるジェームズ・ビアード財団賞の中西部べスト・シェフに日本人としては史上2人目に選ばれたアメリカを代表するトップシェッフです。

−経歴−
1958年 水戸出身
1976年 インテリアデザイナーを目指して上京
1982年 シカゴの日本食レストラン立上げの為渡米 
      その後YOSHI'S CAFE 等を経てシカゴの有名レストランAMBRIA のパートナーとなる
1996年 トリビュートのエグゼクティブ・シェフとしてスカウト。デトロイト郊外に移る
1999, 2001, 2002 & 2003年 
ジェームズ・ビアード財団賞にノミネート&受賞
2000年 FOOD & WINE AMERICA'S TEN BEST NEW CHEFS 受賞
現在、
デトロイト郊外の有名フレンチレストラン トリビュートのエグゼクティブ・シェフ

レストラン界のオスカーと呼ばれるジェームズ・ビアード財団賞について教えてください

ジェームス・ビア-ドという人はアメリカ料理界の父と呼ばれたジュリア・チャイルドと共に有名な人です。料理の番組や本などを数多く世に送り出し、テレビ界の草分けとも言われています。彼が亡くなった後、彼の功績を称えジュリア・チャイルドとピーター・ケンプが発起人となり若い料理人を育てようと奨学金を出す為に作られた財団がジェームス・ビアード財団(JAMES BEARD FOUNDATION)です。彼は20年程前に亡くなられましたが、現在もグリニッチビレッジのアパートを開放したレストランに、全米から有名シェッフがボランティアで集い、料理を作り、その売上を財団の運営費としています。 年に1度、その年に活躍したシェフを投票で選れぶのがジェームス・ビアード財団賞(JAMES BEARD FOUNDATION AWARD) です。

日本人としては史上2人目にこの賞を受賞されたという事はとても名誉な事ですね。

はい、とても名誉な事だと思っています。過去4回ノミネートはされていますが、トップシェフに選ばれたのは今回が初めてでとても光栄に思っています。一人目はROY'Sのロイ山口氏で今回は私とカリフォルニアの曽根氏が受賞しました。

何故今回トップシェフに選ばれたと思いますか?

色々な事の積み重ねだと思います。コツコツと地道に頑張って来たことがやっと実り、認められたのではないかと思っています。

当初料理人ではなくインテリアデザイナーを目指していた!?

学生時代はインテリアデザイナーを目指して勉強していました。当時は有名な事務所や研究所を就職先として選んでいましたが、即戦力を望まれた時代ですからなかなか上手くいきません。思うところに就職出来なかったのです。また私は水戸から上京していましたので生活費を稼ぐために16歳から授業が終わった後にレストランでアルバイトをしていました。その時は自分がシェフになる事など全く思っていませんでしたが、今思えばそれが食との接点となり現在に繋がっているわけです。


アメリカに来たきっかけは何ですか?


1982年にシカゴの日本料理店の立上げの為に友人の紹介で来たのがきっかけです。当初2年の約束で来たのですが、アメリカの生活が気に入った事と料理をもっと勉強したくなりアメリカに腰を据える事になりました。

若い頃はとても生意気だった

アメリカでの生活にも慣れ、料理への探究心も強くなり、もっと突っ込んだ料理をやってみたいと思うようになりました。アメリカで日本食を追求するには色々な問題がありました。対象が日本人だけではない事もあり日本料理を極めていく事とビジネスとの両立には障壁を感じました。丁度その頃シカゴ日航ホテルのオープンとなり、それを機に日本食からフレンチへ移りました。そこで2番シェフに抜擢され、メニューやレシピを作る事になりました。とても良いチャンスをもらったのですが、自分としてはもっとラインで勉強したいという気持ちが強く別のレストランに移りました。今思えば良い環境を与えられているのに、もっと色々やりたくて生意気な事も言ったり、やったりしていたように思います。

シカゴの有名店アンブリアのパートナーの地位を捨て何故デトロイトに?

アンブリアに移ってから8年後にはパートナーとなりました。社長であるスペイン人のガビーノには公私共にお世話になりました。実は仕事ばかり熱心にやっていた私に少しは息抜きの為プライベートな時間を楽しめという事で一人の女性を紹介されました。いわゆるブラインドデートだったのですが、その時会った女性が現在の妻キャサリンです。ですからアンブリアに特に問題があった訳ではありません。多少料理面で感覚が違う所もありましたが、トリビュートのオープンに先立ってシェフを探していた所白羽の矢が私に当たったという事です。

子供が出来たばかりの時の転職

私を選んだ理由というのもシカゴトリビューンのライターが実力があって尚且つそれ程有名でないシェフという事で私を推薦してくれたからです。トリビュートにスカウトされた時、丁度子供が生まれたばかりでしたから色々と考えました。私が出した条件はトリビュートの料理は全て自分で自由にさせてくれるか、日本人である自分のテイスト・日本も取り入れて良いかといった事でした。金銭面も含めて全て条件を了解してもらい、完全なるバックを得た形でトリビュートのオープンから参加しました。


料理に関する考え方

フュージョンという言葉を良く聞きますが、私はあまり好きではありません。自分の主張をはっきり打ち出す事もなく、ただ格好が良い、サウンズグッドなだけでは料理はやっていけません。トリビュートの料理はフレンチですが、シェフの育った所、今まで一緒に働いたシェフの影響が出てきます。私は日本人である自分がフレンチをどのように消化しているかを常に気にしています。私の料理の基本はシンプルはシンプル、コンプレックスはコンプレックス、このバランスだと思っています。例えば刺身や寿司はシンプル。素材によって大きく左右されます。それに比べてラタトゥイという地中海料理はズッキーニ、トマト、なす、赤・黄ピーマンなど12〜13種類の素材をオリーブオイルで煮込んだものですが、素材の原型が分からない程手を掛けて味を引き出す料理です。基本的には素材が全てです。手を掛ける料理と掛けない料理のバランス、フレンチは素材に手を加えトータルで一つの新しい味を創りだす、そこに素材本来の持ち味を最大限に引出し、食感を大切にする日本の良さの影響を与えてあげる。そして自分の料理として完成させる。それが今のトリビュートの料理となっています。

味が分かるデトロイトのサティスフィケイトした顧客

オープンする前は自分の料理が分かってもらえるか、味が分かる人がデトロイトにはいるかなどと不安に思っていましたが、オープンして1ヶ月でその不安は解消されました。ご存知のようにデトロイトはBIG3をはじめ多くの人が自動車業界で働いています。その中にはパリの3星レストランで食事をして地元デトロイトに戻ってトリビュートでゆっくりと味を楽しむという人が沢山います。そういった味にうるさい、舌の肥えた人がトリビュートの顧客となっています。シカゴにはアンブリアやTRU、チャーリートラッターなどのスペシャライズな店が多くありますが、デトロイトは人の数も少ないですから、トリビュート以外に別の店が出来てサティスフィケイトされた顧客が2分されるかは疑問です。

トリビュートとはどのようなレストランですか?

デトロイトの北の郊外 FARMINGTON HILLS にあるフレンチレストランです。入口両サイドには白と赤ワインがそれぞれ温度管理された部屋に保存され、その様子が見られるようなデザインになっています。店のデザインはその立地から窓がなく、トリビュートの中で料理を含めて全てを満足してもらえるようにインテリアや壁画にまで意味を持た空間になっています。地下にはキッチンと8人まで座れるシェフズテーブルを用意しています。調理している所をご覧いただきながら料理をサーブする訳ですから気が抜けませんね(笑)。料理はフレンチですが、私の考えのもとフレンチと素材の持つ本来の良さを引き出した和のテイストとのバランスを大切にしたものに仕上げています。また、トリビュートのお薦めは料理、ワインの他にもパストリーシェフ MICHAEL の創るデザートも自慢です。彼は全米トップ10 BEST PASTRY CHEFS IN AMERICA に2002年、2003年連続で選ばれるトップシェッフですから彼の創る美味しいデザートは味もデザインもアートです。

成功する人とそうでない人


料理は全ての人が同じ物を食べて美味いという事はないのです。100人中60〜70人が喜んでくれれば、それは成功です。ですから成功している料理人とそうでない料理人は紙一重だと言えます。しかしアメリカで成功する為にはそれだけでは難しいと思います。日本人は料理の世界に限らず一所懸命やれば分かってくれると思っている人が多いと思いますが、それは甘えです。アメリカの社会は全く違います。意見をちゃんと言って、分かってもらう為の努力をしなくてはいけません。勿論英語が出来ないと駄目ですが、下手でも時間がかかってもその気持ちをちゃんと伝えなければならないのです。母国語ではないのですから下手だったり、同じ事を伝えるにも時間が掛かる事は仕方がない事です。大切な事は自分の意見をちゃんと言える、伝える事だと思います。自分はこうしたい、例えばキッチンを綺麗にしたい。何故ならこういう理由だから。ときちんと意思表示していく事が肝心です。また、思い込みの強い人も良くないですね。アメリカ人は怠け者と思っている日本人も多いかと思いますが、アメリカ人は凄く良く働きます。怠け者は国を問わず何処にでもいるのですから、いかに働くようにするか、してあげるかが重要だと思います。


シカゴとデトロイトに住んでみてどちらが良いですか?

どちらも良い所が沢山ありますから一概にどっちという事は難しいですが、子供を育てるという点ではデトロイトの方が良いように思います。シカゴに比べて渋滞も少ないですから生活という面でもデトロイトの方が楽かもしれません。シカゴの方が行くところや遊びの種類も多く楽しい
ですから若い時はシカゴの方が良かったかもしれませんね。

休日はどうのように過ごしているのですか?

家族で過ごす事が多いですね。週に2日は休みですから、1日は皆で外で食事をします。もう1日は私が料理をします。その方が早いし、キッチンも汚さず綺麗ですし、美味しいですからね(笑)
。家族は妻のキャサリン、11歳の息子と8歳、4歳の娘、そして犬のRUDY。息子はアイスホッケーをやっているのでレッドウイングの試合を見に行ったりします。子供ながらに自分のやっている事ですからとても興味深く試合を見ていました。家族全員が健康で賑やかで家族でいる時にとても幸せを感じます。普段は妻が子供の宿題の事など含めて全て家の事をやってくれているので休日は家族サービスしないといけませんよね。

最後にシカゴ・デトロイトのお薦めスポットをご紹介ください?

私は学生時代ギターをやっていたのでシカゴのジャズショーケースやブルースなどが好きですね。サックス奏者のディキスターゴードンは亡くなる前に是非聴きたいと思って店に行きました。かなり歳をとっていましたがちゃんと演奏していましたよ。レイク沿いでのショッピングなども楽しいと思いますし、食べ物も美味しいですね。デトロイトではやはりトリビュートがお薦めですね(笑)

本日はご多忙の中、貴重なお話を聞かせて頂きまして有難うございました。

インタビュー後記
数々の賞を受賞し、全米トップシェフにまでなった柳橋さんの口調はやさしく、言葉の端々に思いやりと情熱が感じられます。料理に対する熱い思いと休日を家族で過ごす穏やかな人柄、料理と同様バランスのとれた魅力的な人です。将来は家具や照明、コンセプト、料理を出すお皿まで全て自分でプロデュースするのが夢と語ってくれた横顔に力強さを感じます。
インタビュー後に店内を案内して頂き、ご馳走になりました。トップシェッフが料理するその味は噂に違わぬ素敵なもので、そのお人柄が分かる程やさしく、美味しい料理でとても魅了されました。レストランも素敵でお薦めです。次回は是非プライベートでもお邪魔したいと思います。お忙しい中お時間を頂き、大変有難うございました。

小坂孝樹

関連リンク
TRIBUTE http://www.tributerestaurant.com/
おでかけレストラン紹介 http://www.odekake.us/detroit/topic_tribute.htm

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